ワッツ・ハンフリー氏が、デバッグ手法に関する本を執筆

カーネギー・メロン大学のワッツ・ハンフリー氏が、
バグの無いプログラムへの道を語る


ソフトウェアの世界の外では、ワッツ・ハンフリー氏は
あまり知られていないが、世界の中では「ソフトウェアの品質の父」
としてちょっとした有名人だ。


カーネギーメロン大学のSEIの一員である彼は、
バグの無いソフトウェアプログラムを効率的に、
スケジュール通りに開発者が作成する手助けとなる
CMMをSEIで作り上げている。


ソフトウェア開発が高く、期間を長くする
プログラムに10行毎に埋め込まれたバグは、
CMMの認定を受けた企業では、1000行に1つでしか作られない。


CMMは、ソフトウェアの世界におけるシックスシグマであり、
何年もの間、国防総省の様な政府機関やマイクロソフト
IBMなどを、バグの数を減らし、時間短縮、工期削減により助けてきた。


最も恩恵を受けたのはインドである。
1990年代の後半にCMMが広まり、早期の導入を経た事で、
知られていないインドのソフトウェア業界は、バグが無いという評判という
成功の為のカードを手に入れた。
インド人達は、ハンフリー氏の事を彼らの「ソフトウェアの指導者」とも呼んでいる。


今年2月、ハンフリー氏のソフトウェアに対する功績は、
科学栄誉賞というアメリカで最も権威ある形で表彰された。
彼は、品質基準を高め、作成しているTSP(Team Software Process)や
PSP(Personal Software Process)は、100万行に2万はあるバグを、
たった60しか作りこまないプログラミング作成に改善するのである。


加えて、TSPはプログラムが作成された後の試験の時間も削減する。
ハンフリー氏によれば、平均して68%の削減が見られるという。
また、TSPは、顧客と仕様策定者の相互理解も向上させる事で、
よりセキュリティの高いソフトを作る事にもつながるという。


ハンフリー氏は、毎朝5キロは走っているそうで、
77歳という年齢ながら非常に活発である。
彼は、シカゴ大学の物理と経営学の博士課程を卒業して、
IBMで27年間を過ごし品質への情熱を培ったそうだ。


彼は、今年の3月にインドで彼の新しい標準化に関しての説明をした。
もちろん、これはインド企業だけが彼から学ぼうという事を示しているのではなく、
マイクロソフトやテキサスインストルメント社のインド支部でも
多くの時間を費やしている。
彼は、ビジネスウィークのインド支部長のManjeet Kripalaniとも話をしている。


Q:TSPやPSPは、CMMに対して何かもたらすのでしょうか?
 それとも何ももたらさないのでしょうか?
A:TSPは、新しいプラクティスとチームコンセプトに対しての物です。
 例えるのなら、医者が手術の前に道具を殺菌して、手を洗うの様な事です。
 もし、彼がそれをやらなければ、おそらく患者を殺してしまうでしょう。
 TSPも同じ事で、誰もが好まなくても、実施しなければ、被害がもたらされます。
 TSPやPSPCMMを次のレベルへ押し上げる物なのです。


Q:これは、業界全体に対する効果なのでしょうか?
 それとも、固有の企業に対する効果なのでしょうか?
A:米国では、これらの改善は、彼らが必要と考えた時のみ実行されます。
 そして、それが成功すると、もう変化の必要は無いと考えてしまう。
 インドの企業達は、ソフトウェアが中心業界と考えている為に、
 CMMに関しては早期から取り組んでいました。
 今は、顧客は前とは変わっていませんが、幾つかの米国企業も
 マイクロソフトやテキサスインストルメント社の様に変化しています。


Q:早くに芽が出てくるのは、どこでしょうか?インドの企業群ですか?
A:米国の企業の多くは、インドの企業よりも新しいTSPのシステムを導入しています。
 私は、米国企業には、インドや中国や東ヨーロッパやブラジルが彼らの仕事を
 狙っている事を告げています。しかし、彼らの多くは、その事を理解していません。
 彼らは、まだ気づいていないのです。同じく、インドの企業には、
 中国が仕事を狙っている事を話しています。彼らはCMMの認定を取っていますし、
 私のTSPやPSPの本は既に正式に中国語にも翻訳されています。
 肉体労働と低賃金は効果を出さず、屋台骨となる業界を作るのであれば、
 正当な製品は何かという事と品質の要因に目を向ける必要があります。


Q:TSPという次のレベルに行く必要はなぜあるのでしょうか?
A:今の全ての仕事がソフトウェアのビジネスだからです。
 ソフトウェアは、私達の全ての技術を利用し易くします。
 また、ソフトウェア企業は、バグが混在したプログラムによって、
 被害を被っています。90%以上のソフトウェアの脆弱性が、
 何て事は無いプログラムに潜んだバグで引き起こされているのです。


Q:CMMの成功にはどの様に感じていますか?
A:光栄に感じています。CMMは、当初は全てが私の仕事の参照を
 記述しているという状態でした。
 今は、私がCMMの記事を見ても、それらは私の事は参照していません。
 最も最近のCMMに関する記事は、インドの女性によって書かれましたが、
 私の初期の仕事は全く参照されていませんし、私も実際そうです。
 本当に成功したという事は、生み出した本人無しでも技術が生き残っている
 という状態にしなければなりません。
 私は、TSPやPSPで、同様の事を実現させたいと考えています。


Q:ハンフリー氏は、どの様に品質に対する取り組みを始めたのですか?
A:IBMに居た時、米国空軍が顧客でしたが、ソフトウェアの開発契約の
 入札者を評価して、正当な契約を学ぶ手法を依頼されたんですね。
 私達は、その数年前から実施されていた5段階の品質改善プログラムを
 適用したんです。それらは、ソフトウェアをベースにしていませんでしたが、
 機能していました。しかし、一年後にアセスメントを実施した所、
 実際には機能していなかったのです。


 私は、ハードウェアの技術者がスケジュールを管理できるのに、
 ソフトウェアの技術者がスケジュールを管理できない事を常々興味を持って
 いました。IBMのソフトウェアで働いていた時は、
 私達はスケジュール通りにソフトウェアを提供する事で組織を変えたのです。


 それからは、個人的な経験の話になりますが、
 IBMを退職した後、娘が私をcommitmentに関するセミナーに
 行く様に説得したんですね。
 そのセミナーで、"outrageous commitment"、例えば世界飢餓を打破するような、
 話を聞いてIBMを去った私は世界のソフトウェアの開発の仕方を変えるような
 事をしようと思ったのです。それは、ビーチで悠々自適と暮らすより魅力的
 でしたしね。


Q:どの様にモデルが一般化したのですか?
A:SEIでは、空軍が再度、システムへの入札相手の比較の要請がありましたし、
 それから国防総省も私達のプロセスを使いました。
 企業の中では、ボーイング社、Schulmberger社やモトローラ社は
 早い段階での適用組織でしたね。


Q:インド企業はどの様にあなたまでのやり方を見つけたんでしょうか?
A:分かりません。私は1995年にこの地を訪れて、CMMと品質管理に関する
 公演を大きなカンファレンスで実施したり幾つかのミーティングに参加しました。
 その際、何人かのCEOや政府の人間と会いました。
 彼らは、CMMや品質管理を優位に立つ為の価値がある事だと考えたようでしたが、
 それまでに彼らにこうした事を話した人物はいなかったと思います。
 そうした芽が吹いたという事は嬉しい事でした。


 そして、1995年から彼らは動き始めました。
 モトローラのバンガロー支部では、米国でCMMを学んだ人物が推進しましたし、
 彼のゴールはバンガロー支部CMMのLv5として立ち上げる事でした。
 インド人達は、それらが機能するのを目の当たりにして、飛び乗ったのでしょう。


Q:アウトソーシングバックラッシュは何かのインパクトがあるでしょうか?
A:可能性はあると考えていましたが、驚くほど小さい物でした。
 皆さんは神経質になっていますが、大きな影響はありませんよ。
 「彼らは皆さんのすぐ後ろまで来ている」と私も言っていますけどね。


END